ゴミ捨て場

命を大事にしな

映画「思い出のマーニー」を観てきました

思い出のマーニー」を観てきましたので感想を書きます。

ネタバレは特に気にしてません。

あとかなり文章長くなってるのであなたの貴重なお時間をムダにしないようにお気をつけ下さい。


なんかジブリってこう、人間の「陽」の部分を基調として物語を描いていく印象があったんですよね。

ジブリの主人公たちってみんなニコニコしてたり、勇ましかったり、元気じゃないですか基本。当然全部が全部そうじゃないのはわかるんですけど。

なんてゆうか家族みんなで見て楽しめるような映画っていうんですかね。最近はそうでもないみたいですが。


冒頭部分からおっこれは、と思ったんですけど、主人公の杏奈が、他の生徒達が札幌のどっかの公園でみんなでワイワイやってる中独りで写生してる時にこう心のなかでつぶやくんですね。

「この世には目に見えない『魔法の輪』がある、輪には内側と外側があって、私は外側の人間。」

これがまずいいなと。で、色々あって(詳細は最後に明かされるんですけど)死んだ両親に代わって自分を育ててくれている養父母に対する態度もかなり冷めていて、全然感情を表に出したがらない。なんだこのこじらせちゃってる女の子は、っていうのが第一印象で、あっこれ好きになれるかもって気がしたんですね。

僕も「魔法の輪の外側」にいるって思い込んじゃってる人間ですからね。25にもなって。


そういう女の子(12才というのがまた良い年齢設定だと思うんですけど、13でも良かったかな)がですね、喘息の療養のために北海道の海辺の村の親戚の家で暮らすことになるわけなんですね。

その村で生活している中で偶然見かけた湿地屋敷(誰も住んでいなくてボロボロ、湿地に囲まれていて夜になるとボート漕いでいかないと渡れない所にある)に杏奈は何故か惹かれてしまうんだけど、ここもなんか、すごくワクワクするところで、杏奈みたいなタイプの子が(というか僕がだけど)、「人」よりもこういう神秘性を感じさせる何かに引き寄せられるのがなんかすごくわかってしまう。


そういうワクワクさせてくれるような発見をする一方で、やっぱり村の子供達とはうまくいかなくて、追い込まれちゃって、やっぱり自分が「輪の外側」にいるどうしようもない人間だって言う自己嫌悪を更に悪化させちゃうんですね。

そんな状況で逃げ惑うようにして湿地屋敷に向かうんだけど、その屋敷では金髪碧眼のまるで幼いころのキエル・ハイムみたいな感じの風貌のお嬢様(マーニー)が待っていて。

私はあなたのこと待ってたのよみたいなことを言ってきて、あっという間に親密な仲になっていくんだけど、ここの描写がまたとても素晴らしくて、何かというとスキンシップが多めだったり、その度いちいち杏奈が顔を赤らめたり、少しずつ杏奈がマーニーに心をひらいていく様子がすごく丁寧で、僕ちょうど好みの分量の百合成分というか2人の距離感がど真ん中ストレートすぎてありがとうという言葉しかなかったですね。

屋敷では豪華なパーティが開かれているんだけど、屋敷から抜けだして外で2人が踊るシーンとか本当に良かった。

夜の湿地のボートの上でマーニーが「このこと(杏奈とマーニーが出会ったこと)は絶対に私達だけの秘密よ」とか言うわけなんですけど、このシーンも他のただただ不愉快な人間たちには絶対に踏み入られることのない密やかな2人の関係がすごく良いなって思いました。

このマーニーとの出会いまでの話が前半で、後半は前半で提示された謎が明かされていく展開になるわけなんですけど、、ここまで書いてて思ったけどやっぱり前半が良いですね、マーニーは。


マーニーは、杏奈にとって荒れきった心を癒やす唯一無二の存在になったし、本当に杏奈が心の底から自分のことを好きでいてくれていると信じられる初めての存在なのかもしれなくて、「マーニーが何者なのかなんてどうでもいい。マーニーが好き。」っていう杏奈の気持ちがすごくよくわかる。

マーニーもまた、辛い境遇に身を置く女の子なんだけど、大きな悲しみを抱えつつも杏奈を包み込む優しさが表情や声色にとても良く出ていて、すごく良い。

杏奈はマーニーに救われるけど、マーニーも杏奈と出会ってから、孤独を埋めあい悲しみを共有することで、安らぎを得ていくのですよね。

杏奈は「魔法の輪の外側」にいる(と思い込んでいる)人間だけど、少しずつそんな自分でも認めてあげられる(内側の方に顔を向けることが出来るようになる)ようになっていくわけです。

そういう2人の気持ちの微細な揺れ動きの描写が、すごく丁寧で秀逸だなあと思います。

このアニメは百合か否か、というような見方ははちょっともったいないんじゃないかなと僕としては思います。

杏奈とマーニーは杏奈とマーニーであって百合ップルとか大親友とかそういうものに当てはめる必要はないのではないかと。

二人の間にある感情が恋愛感情に近いものなのかどうか、ということはこのアニメを解釈する上で特に不要だと思っていて、お互いがお互いにとってかけがえのない存在であり、救い救われる存在である、そういう関係であるのは間違いないわけで、その事実がこのアニメでは大事なんじゃないかなと思います。


話が変わってしまってあれですけど、音楽というより、まあ音楽も素晴らしいんだけど、音の使い方が凄くうまいなという印象もありました。

杏奈の心情をそのまま反映させたかのように序盤はすごく静寂を保っていて、見ていてすごく心地よかったです。ストレス無く物語に没入することができた。

マーニーと出会ってから徐々に喜怒哀楽いろんな方向にテンションが盛り上がっていく。音の使い方の巧さはジブリの既存作品もそうなのでそんなに褒めるようなところでもないですかね。


最後にオチについてですが、うーんまあ、はっきり言うと僕的には理想的な終わり方ではなかったです。

というのもまあ、マーニーは杏奈のおばあちゃんだった、わけなんですけど、僕としては完全に神秘的な存在であって欲しかったなと。

まあ作品意図としては実はマーニーは幼い頃の杏奈の面倒を見てくれていたおばあちゃんだったんだよ、というところで泣かせるというのはあったと思うし劇場で見ていた時も鼻水すする音めちゃくちゃ聴こえてきましたけど。

「マーニーが何者かなんてどうでもいい、マーニーが好き」という気持ちこそが尊いものだと僕は考えていたので、おばあちゃんだったんだよ、という展開で、そこでありがたみを感じてしまう杏奈を見るのはちょっとつらかったです。

当然マーニーにとっての杏奈も、あの夜に湿地屋敷で出会ったかけがえのない存在であって、それ以上でもそれ以下でもない存在であって欲しかったです。

まあ最後のこのオチでちょっと既存のジブリ作品のターゲット層に擦り寄ってる感を感じました、というだけで結局つまらない作品だったということは全く無いです。

杏奈がマーニーと出会った時の気持ちは本物だったはずだし、それはとても美しいものだったので。

ということで「思い出のマーニー」すごくいい映画でした。長くなってしかも話が色々それたり同じこと何回も話してたりの駄文になりましたが最後まで読んでくれてありがとうございます。

いややっぱり金髪縦ロール碧眼のお嬢様って反則ですよね。